■ 気功治療の実際
気功治療は、あまり大学病院ではおおっぴらにできませんでした。しかし、週に一度、24時間勤務で行くアルバイトの病院では、多くの患者さんにそれを試してみました。自分の手を患者さんの患部の近くにあてたり、全身に広げていったりして、外気を送っていくのです。だいだい5分から10分間ぐらい、それをやり続けます。
肩こり、寝違い、腰痛や捻挫など整形外科的な疾患は、痛みの症状が取れるなどしてすぐに改善がわかりました。もちろん、すべての人に効果があるというわけではありません。とても効果の出やすい人やあまり効果の出ない人、まったく反応のない人などさまざまでした。その違いは何によるものなのかわかりませんが、気が入りやすい人と、入りにくい人がいるようです。
中には、足の捻挫で家族に支えられて足をひきずりながら、やっとのことで診察室に入って来られた中年の御婦人が、気功治療によって自分ひとりで歩いて帰ることができたことも経験しました。気功治療をしている私自身が驚いてしまうような、あまりにも劇的な改善を目にすることも数多くありました。また、こんなこともありました。私が、バイトの病院で当直をしていたときです。夜遅くに、吉野の山奥に住んでいるという高齢な御婦人が来られました。
話を聞くと、息子さんと喧嘩をして突き倒された際に両手をひどく打撲したそうです。痛みがひどいために町立病院の救急で診察を受けましたが、レントゲン写真で骨折はなかったので、鎮痛剤で様子を見るように言われたのでした。その後、娘さんのところに行かれて様子を見ていましたが、痛みがひどくなり、疼いて眠れなくなってしまったのです。
そして夜分にも関わらず、娘さんの家に近いそのバイトの病院に診察を受けに来られた、ということでした。その御婦人は、あまりにも両手が痛むのか、診察室に入るなり、「先生、痛み止めの注射をして下さい」と、言われました。私は試しに、御婦人の左手から両手を使って外気を送りました。5分もしないうちに痛みは止まってしまい、次に御婦人は右手を差し出しました。同じように外気を送りますと右手の痛みも消えました。その御婦人は大変喜ばれて帰っていかれました。
実は大学病院でも気功治療をしたことが、ほんのわずかですが、ありました。私が主治医だった食道ガンの患者さんです。術後に頚部の吻合部から出血がありました。
術後しばらく経っていましたが、もし再手術となると大変なことになります。私は個室にいた患者さんに何回か気功治療を行いました。すると、出血は止まり、その後無事に退院することができたのです。
また、大学の同僚から気功治療をして欲しいと依頼を受けたこともありました。彼は私と同じ胃ガンの研究グループに所属しており、私が冬休みを利用して、気功治療を習いに行ったことを知っている数少ないひとりでした。患者さんは、原因不明の十二指腸閉塞症状で発症し、膵頭部ガンの疑いで大学病院に送られてきた人でした。術前の腹部CT、エコーなどの検査では膵臓に明らかな病変が見つからずに、ただ十二指腸壁の肥厚しか判明できなかったのです。
診断がつかないために試験開腹術が予定されていました。当時、私自身、気功治療ができるようになってからまだほんの2ヶ月しか経っておらず、初めは原因不明の十二指腸閉塞症が改善するかどうか半信半疑でしたし、まったく自信もなく不安でした。しかし、気功治療で患者さんの症状が改善して手術が不要になれば、本人にとって大変素晴らしいことであると思い引き受けました。その時の経過を簡単に説明いたしましょう。
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